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恵くんと約束し三人も満足したところでやっと如月と俺の分に取り掛かる。 如月って何枚食うかな? 俺三枚は食うけど…いや今日は五枚…じゃあ十枚焼くか。 余ったら藤井にやればいいし。多分食うよ奴なら。 「うし、出来た」 「ごちそうさまでした」 「ああ捨てていいよそれ」 ゴミ箱を顎で示すと恵くんは手いっぱいの空きカップを中に落とした。 食後に今朝作ったゼリーを出したんだ。如月と藤井の分だけいくつか残して。 けど全部食うとは思わなかった。 「皆さん美味しいって喜んでましたよ」 「ほんと?」 「はい。僕も美味しかったです」 「はは、そら良かった」 二つの山盛りになった皿を持ってリビングへ移動する。 すっかり寛いでる隊長達は皿を見てこちらに身体を寄せた。 「駄目ですよ。これは俺と如月のなんで」 「「「ケチ」」」 「さっきあんな食ったくせに何言ってんすか」 食っちゃ駄目と釘を刺すも三人の目は皿を捕えたまま。おあずけくらってる犬みたい。 「恵くん、」 「はい」 「見張っててくれる?」 三人が食べないように。 笑いながら言うと恵くんも苦笑いを浮かべながら頷いた。 隊長達のブーイングを受けつつ藤井の部屋へ入る。 相変わらずだなあ… 棚には申し訳程度の教材とスポーツ誌がいくつか並び机の上は着替えやらカバンが放り投げられている。 床にはバスケ用と思しき靴、その横にはふたつのボールが転がっていた。 投げられていた服を畳もうと手を伸ばす。一枚二枚と椅子にかけていけば埋もれていた写真立てが顔を見せた。 藤井と数人の男女が一緒になって写っている。 一度、一年の時に見せてもらった。 藤井が中三の頃バスケの大会が終わって打ち上げをした時に撮ったらしい。 ああ懐かしいなあ… 藤井の隣で大人しそうな女の子が顔を赤くしながら、けど柔らかい笑みを浮かべカメラに目線を向けている。 どうなったんだろ?あれから連絡取ったのかな… 滅多に聞かない藤井の話を思い出していると何か声がするのに気づいた。 自分では、もちろん無い。 ドアも入ってすぐ閉めたから隊長や恵くんじゃない。各部屋の個室も防音になってるため音がもれてくる、なんてことはないのだ。 じゃあ誰が? ベッドに目を向ければあると予想した通りの頭がシーツからはみ出ていた。
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