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やっぱりこっちにいたんだ。 仰向けになり胸辺りまでシーツを被った如月がそこにいた。 しかし様子がおかしい。 普通に寝入っているのとは違う、呼吸を荒げ、苦しそうに呻き声を上げながら身体を捩る。時折何かを呟いて、シーツに皺が出来るほど拳を握りしめていた。 「如月!」 静かにしないと、なんて考えは頭から飛んでいった。 駆け寄って思わずその小さな肩を掴む。 「如月?!」 何度目かの呼び掛けで如月の目が開き勢いよく起き上がった。 「…大丈夫?」 荒い息のままこちらに向けられた目は、状況が理解出来てないらしい、俺を見て顔を歪めると何か探すように部屋中を眺めていく。 ドア、壁から棚、窓に移り天井、床、そして自身の眠っていたベッドへ戻ってくる頃にはさっきまで荒れていた呼吸も幾分か落ち着き、それと並行するように如月の目から光が無くなっていく。 何か大切なものを無くしたように、 大好きな家族がそばから居なくなったように、 悲哀に満たされ、彼の心が悲鳴を上げる。 いや、上げる気力すら起きないほど、彼はもう、何も考えてなかった。 考えたくないと、暗い暗い底で目を塞いでる。 「如月、」 思わず、呼んだ。 こっちに戻ってきてほしくて。 …けど目の前には身動ぎひとつしない少年がいるだけ。 「…琉!!」 どうか戻ってきて。 そっちに居ないで。 そんな暗いところ居たって、苦しいだけだよ… 名前を呼んだ瞬間、びくりと如月の肩が揺れた。 ゆっくりこちらへ視線を向ける。 …ああ、 俺を捉え、戸惑うような、自分を恥じるような色に変わっていく。 良かった… 戻ってきた… 「おかえり」 呟いたそれに如月は怪訝な表情を浮かべた。 けど、それが一番しっくりきたんだ。 戸惑おうと情けなくなろうと、こちらに居て、一人で目を逸らしたりしていない。 きっと俺にはわからない闇が如月にはあるんだろう。 その闇を分かち合うなんて出来ないかもしれないけど、 せめて… 「大丈夫だよ」 「………」 ここだけは安心だって、 「大丈夫」 そっちに引きずられないように、 しっかりつなぎ止めていたい。
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