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無意識に伸ばした手は如月の細い指を包んだ。
触れた肌は、背筋が震えるほど冷たかった。
あの時を思い出す。
あの、昨日の昼、
如月が隊長達にまで手を伸ばした、あの時、
掴んだ腕もこんな温度だった。
触れたところが、冷たすぎて火傷を負いそうな、そんな温度。
…俺の手じゃ足りないかな?
少しは暖められないかな?
手で手を擦って、大丈夫だよとまじないのように呟いて、それを続けていたら遠慮がちに如月も俺の手を取った。
顔を上げれば、戸惑い、怯えた表情の如月が目に入った。
うっすら濡れた瞳が暗がりに揺れる。
如月も目線を俺に合わせ、お互いの視線が重なる。
そんな不安そうな顔しないで。
「…大丈夫だよ」
だから、安心して?
一瞬か、数分か、わからないけれど如月は何も言わずこちらを見つめた。
信じきれないような顔、
何か迷っているような、けど何を考えてるかわからなくて、
「大丈夫…」
何度も何度も繰り返す。すると、不意に目の前の双眼が揺れ、唇が震えた。
泣きそうな目をしてるのに、
いまにも嗚咽をはじめそうなほど不規則な呼吸になってきてるのに、
それでも泣かない如月は何かを待ってるように見えた。
自然と、体が動いてた。
抱き締めた腕の中で如月は堰を切ったように泣き出した。
「…そ…まあ…」
すすり泣く合間に入る、如月の呟き。
なんだろうと耳を澄ます。
「…そうま…」
そうま。
…誰かの名前だろうか?
縋りつく如月の背中を擦りながら俺はずっと、繰り返されるその言葉を聞いていた。
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