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「………」
小さな寝息がようやく規則性を帯びてきた。
…寝たかな。
胸元に視線を落とせば如月のつむじがよく見える。
ギュッと半端ない力で握られた服は如月の息がかかる度、冷たい部分が当たって寒く感じた。
あ、そういや着替えてねえじゃん俺。
如月汗臭くなかったかな?
自然乾燥に任せていたシャツは如月の涙を受け再び冷たくなってきた。
寝息しか聞こえないと思ってたが耳を澄ませば外から聞こえる水滴の音。
いつの間にか雨が降り出したらしい。
空気も冷えてきて鼻の奥がつんと痛くなる。堪え切れずくしゃみをしてしまった。
やば、結構デカくなった。
如月もうるさかったのか声を上げて身体を動かす。
起こしたかなと見ていたが再び寝息をたて、離すまいとしっかり繋がれた手を見て思わず笑った。
背中に回していた手で、幼い子供を寝かしつける母のように、ぽん…ぽん…と叩いてやれば手の力がまし皺が増えた。
なんか、子供みたいだな。
無性に可愛く思え抱き締める腕の力を強めた。
こんな弟欲しいよなー…
などと呑気に考えていたらドアが開いた。
「ちょっと遅くない…」
市井隊長を先頭に恵くん、二ノ宮隊長・三橋隊長が立っていた。
目が合った瞬間、四人共こちらを見てフリーズしてる。
俺が誰かを抱き締めている姿はどう映ったのか、なんだか後ろめたいような空気に軽く焦っていると、二ノ宮隊長が開いていた口から声を上げた。
「何してん…!」
「しーっ!!」
なるべく小さな声で四人に沈黙を訴える。
人差し指を口に当てればいち早く理解した恵くんが自分の口に手を当てた。
三人も手で押さえこそしないが声は出さないでいてくれてる。良かった良かった。
笑って頷き、それを見た恵くんも頷いて市井隊長や二ノ宮隊長を部屋の外へ促していく。
「…って!だから何…」
遅れて叫びかけた三橋隊長の口を塞ぎ恵くんは三人を外へ押し出した。
ナイス恵くん、流石!
静寂の降りた部屋で雨音と、一人の穏やかな呼吸が浸透していく。
…つか腰痛くなってきた。
実はベッドの上にいるのは如月だけで、俺はベッドの下にいたのだ。
如月もなかなか無理な体勢だが俺も上から体重かけられて結構キツい。脚痺れてきたし。
如月は膝曲げてるけどほぼうつ伏せの状態だったからなるべく上下させないようゆっくりベッドに身体を移す。
結果的に俺は如月を乗せた格好でベッドに横になった。
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