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「うっしじゃあこうしよう!」 俺が叫ぶと二人も黙ってこちらを見た。 握った拳を高々掲げる。 「じゃんけんしよう!」 「「…は?」」 「負けた奴ベッド、勝った奴がソファー!」 「なんだそれ」 「普通逆じゃ…」 「はい出さなきゃ勝ちよー、最初はグー!」 「おい!」 「えっ、マジで?ちょ…」 「じゃんけん、ポン!!」 自然と手を出してしまうこのフレーズ。 二人も例外なく反応し、一発で勝敗は決まった。 …で、結果は。 「意外とデカイなー」 落ちるかと思ったけど平気そう。 「………」 「…ほんとにいいの?」 「はいはいもう決まったんだから二人とも寝た寝た!ほーらベッドはあちらですよー」 「…たく、言ったら聞かねえんだからよ…」 「はいはい藤井もぶつぶつ言ってないで。明日も朝からだろー?おやすみー」 バタンと強制的に藤井を部屋へ押し込んだ。 如月も入りづらそうにしていたが問答無用。 「ほら如月もはやく、」 「…あのさ、」 ん? 背中越しに如月がこちらを振り返る。 その目はどこか不安そうな色をしていた。 「………」 「どうかした?」 「…今日は、ごめん。ほんと…」 「別に気にしないでいいよ」 「…あの時…」 あの時? 如月が何を言いたいかわからない。 代わりに俺は昨日のことを思い出してあっと声を上げた。 そうだ、また忘れてた! 「…どうした?」 如月が急に声を上げた俺を怪訝な表情で見つめてくる。 やー如月のおかげで思い出した。 「昨日さ、ありがとな」 「…え?」 「親衛隊に囲まれた時、助けてもらっちゃって。俺ありがとうも言わないで逆に怒らせちゃったし」 「あ…や、あれは…」 「俺一人だったら絶対無事に済まなかったから」 ありがとう。 やっとお礼を言えたと俺は息をついた。良かったー思い出して。 胸を撫で下ろし如月を見れば、 あ… また… くしゃりと顔を歪め、唇を引き結んでいた。
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