とある三人の内心事情

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「朝比奈、一応計ってみろよ」 如月が促すと渋い顔で体温計を布団の中に持っていく。 俺の言うことは聞かないくせにそいつの言葉は素直に従うんだな。 ひどい顔になってたのか如月の心配そうな目がこちらへ向いていた。 …クソ。 ため息をつけば苦笑いを浮かべられ俺は顔を背けた。 そこへ機械的な高い音が響く。 塊を見ればもぞもぞと蠢いて腕が外に出た。じっと見つめていたと思ったらため息をついてパタリと腕を落とす。 「………」 「何度だ?」 「…36度1分」 平熱ですと言ってまた布団に潜るそいつから体温計を奪い確認する。 「………」 「どうした?」 じっと表示を見たまま黙っていた俺に如月が近づいてくる。そのまま手に持っていたものを見せた。 「36度に見えるか?」 俺の目には39度1分としか見えないんだが。 如月が目をデカくしてあいつと数字を交互に見やる。 「医者診せた方がいいんじゃ?」 たしかに、この熱だとその方がいいかもしれない。 学校には生徒達が体調を崩した時の為に待機させている医者がいた。 …言っておくがあの保険医じゃねえぞ。 あいつはなんとなく、気に入らない。 顔がいいからって親衛隊はあるらしいがろくな噂聞かねえし。 信用ならないってのがひとつ。ケガしてもあいつには診せたくない。          …って話が逸れた。 とにかくこいつを医者に連れて行くか。 「おい起きろ」 「やあだ」 なんだその言い方。 「ラリってんじゃねえよ医者行くぞ」 「やだあ…注射やあだ」 あ? 誰も注射打ち行くなんて言ってねえだろうが。 だが馬鹿にとって医者に行く、イコール注射という方程式が成り立つらしい。いやだいやだと布団にしがみついている。 如月が言っても聞かないとなって仕方なく医者は諦めた。 「おら、とりあえずベッド行け」 「うー…」 もぞもぞと這って進む様はあれだ、青虫とかそこらだな。 明日もこんな調子だったら布団ごと連れてってやる。
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