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馬鹿がいつもの三割増し馬鹿になって笑う。
「お、おい朝比奈…」
如月が手を引っ込めば再び目を開き素早く腕を掴んだ。
そしてもとの位置に戻しまた同じ顔に戻る。
………
マジぶん殴りてえ…
俺の機嫌を伺うようにちらちら見てくる如月も鬱陶しい。
…こりゃ重症だな、俺。
この馬鹿とは別な意味で。
落ち着こうと息を吐き出す。
そして薬を飲ませようと思い立ち次いで何か食べさせないとならないと気づいた。
「病人にはなんだ。桃缶か?」
「え?ああ、食い物?林檎とか?」
俺と如月で話し合っているとまたあの馬鹿が口を開いた。
「冷たいのやら…」
………
…このクソ馬鹿野郎が…
寒がりどころじゃねえぞ馬鹿!
「あ、じゃあお粥とか、」
「お粥キライ…」
「えっと…あと何ある?」
律儀にも要望に応えようとする如月。
良い奴だな。
俺はもう無視だ。こんな奴。
「うどん食いたい…」
…知るか。
つかなんでうどんだよ。つうか食欲はあるとかわけわかんねえよ馬鹿!馬鹿バカ言い過ぎて疲れてきただろ馬鹿!!
「藤井のー…作ったやつ。鍋焼うどん…食いたい…」
………
まあ冬とかよく作ってやったけど。
「それでいいの?」
如月の問いに小さく頷くのが見えた。
「藤井のがあ、いーの…」
………
如月がこちらを向く。
あの馬鹿もこっちを見て訴えてきた。
「ふじー…」
熱のせいなのか何なのか、潤んでる目はいまにも泣きそうで…
…わかったよ。
作りゃあいんだろ?
「鍋焼うどんだな」
「…うん」
「食いたくないとか言ったら顔にかけるからな」
「へへー」
語気を荒くした台詞に何故か笑う馬鹿。熱でおかしくなったか?
「ありがと」
「………」
無防備に笑う姿に思わず顔を背けた。
かろうじて、別に、と呟いて部屋を出る。
あいつはなんであんな風に笑う?
知ってる。
誰にでもそうなんだ。
心を許した奴、親しくなった奴には誰でも。
俺は『親友』と位置づけられてるから、あの顔を見ることが多いだけで。
もし如月や、あの変態が『親友』だとしたらあいつは同じだけ笑うだろう。
それが無性にイラつく。
…けど、そうしたのは自分だ。
そう仕向けた、一年前の自分。
あの頃に戻れるならそんな自分をぶっ飛ばしてやるのに…
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