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作って持って行けば喜んで起き上がった。
耳としっぽ生やして、嬉しそうに麺を啜る。
…たく、ワガママ犬が。
布団を前と肩にかけ、食い続ける。
…如月の手は添えさせたまま。
………
如月が邪魔だろ、と離そうとしても目でそれを遮る。
見たこともないほど目を鋭くしている駄犬に如月も負け、ベッドと馬鹿の座高分高いそこに震えながら手を伸ばしていた。
………
何様気取りだよ。
拳を握りしめたが如月が気づいたのでまたパッと緩めた。
おまえもよくやるな。
たった三日前、会った奴にそこまで出来るか?
俺は無理だ。
けどそろそろ限界だろ。
飯まだだし。
薬を飲む姿を見届け俺は立ち上がった。
「如月、」
「ん?」
「飯食ってこい。テーブル乗ってっから」
鍋焼うどんでなく、普通の鍋。
…まあ朝から鍋もねえけど。
文句あんならどっかで買ってこい。
「冷めてたら火にかけなおせ」
「ん、わかった…」
と言いつつ、隣に視線を送る如月。
それに気づかず再び布団を顔まで潜るあいつにおさまりかけていた怒りが沸き上がる。
大股で近づき如月の腕を掴んで引き離した。
「藤井、」
「いいから行け」
あいつを気にしてばかりいる如月の背中を押し部屋の外へ促した。
「如月ー…」
しかしまた馬鹿が声を上げその足も止まる。
こ・の・馬鹿が!!
「黙ってろ馬鹿犬!」
「なんでー?如月ー」
「えっと…」
「てめえはあっち行ってろ!馬鹿に付き合ってたら飯食うどころじゃねえぞ!」
「やだー!如月ー!!」
「だから黙れっつってんだろ!!如月餓死させる気か?!」
そう言えばうー、と頬を膨らませたが口を閉じた。
まだ何か言いたそうなそいつを睨み付け如月にはやく行けと目で促す。
如月が苦笑しながら部屋を出ると沈黙がその場に流れた。
馬鹿を見るといまだ物欲しげに如月が出て行ったドアを見つめている。
こいつ…
普段は他人の迷惑な行動を極端に避けるくせに、この違いはなんだ?!
…はっきり言ってうぜえ。
ため息をついて手を伸ばした。
汗ばんだ額がこっちの手の平に熱を移す。
なんだよやっぱ熱いじゃねえか。
「いまはこれで我慢しろ」
じゃなきゃ布団包まってろ。で寝ちまえ。
そう思ったがそいつはぼうっとこっちを見て動かなかった。
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