とある三人の内心事情

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いまだ潤ませた双眼がこちらを見て離さない。 「…んだよ」 あっち向けと当てていた手で頭を押すとあいつの手が伸びた。 俺の手を掴む。 如月みたいに固定するのかと思い力を込めるが、 …固まってしまった。 別にこいつの力が強いとかそんなことでなく、 こいつの行動に、固まってしまった。 俺の手を掴んだそいつは力いっぱい頭を擦りつけてきた。 しばらくそれを続け、気が済んだのか、少し浮いていた身体を布団に沈めた。 手は、固定したまま… 「………」 熱が移ったのか… 手の平が、妙にヒリヒリする。 「藤井の手ー、でっかいねー」 「………」 「あったけー…」 片腕で押さえていたのを両腕にし、さっきと同じように頭をすり寄せる… 熱い息が腕にかかる。 …なんなんだよ、 痛い。 …なんなんだよ、おまえは。 腹の上にある場所が痛い。 奥の奥から生まれる痛みに悲鳴を上げそうになる。 こいつは勘違いしてる。 いや、正確には違う。 初めはそれが正しかった、けど徐々に変わっていったそれには気づかず、いまだ続いてるもんだと思ってる。 だから、気づかない。 いや、微塵も疑わない。 俺がどんな気持ちでおまえといるか。 俺がどんな想いでおまえとあのエセ関西弁の会話を聞いてるか。 俺がどんな痛みを持って、笑うおまえを見ているか… けど、気づいた瞬間、 こいつはきっと笑わなくなるだろう。 もしかしたら変に考え込んで泣くかもしれない。 だから、言わない。 いまの状況に満足とか到底出来ない。 けど、『親友』の位置を失ったら、 離れていくかもしれないと怖くなる。 それくらいなら、 いっそこのままでいい… 『臆病なんだな』 ああそうだよ。 おまえの言う通りだ。 …それだけおまえが… ───なんだよ…
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