とある三人の内心事情

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いい気味だと鼻で笑うと聞こえたのか一瞬奴がこちらを睨んだ。 んだよ何キレてんだてめえ… 睨み返せばお互い殺気を含んだ空気が流れる。 しかし如月がそれを感じ取ったのかこちらを不安そうに見てきた。 …わかったよ何もしねえよ。 そいつの前じゃあ、な。 俺が不本意ながら先に折れ視線を外した。 すると俺がさっき目線を交わした如月へあいつは振り返った。 「たしか転校生は黒髪眼鏡でネクラなオタクやなかったか?」 その口調はいつもみたいに軽い鬱陶しいものなのに声音は数段低い。 こんな声出せたんだな。 …つうか、如月が転校生ってなんでわかる? いまの如月はカツラを取り、自毛を晒している。眼鏡も着けていないから、例え転校生の外観を知ってても、いや、知ってる奴ならなおさら、いまのこいつと転校生は結びつかないはずだ。 それだけこいつの格好は目を引く。 如月もはっとしたように頭に手を伸ばすがそこにある自身の髪に触れるばかり。 「…ま、そんなんどうでもええわ」 どうでもいいだ? 自分から聞いたくせに何言ってやがる。 「なんで転校生が森の部屋におるん?」 茶髪の後頭部しか見えない、 だから眼を見ることは出来ないが声音でわかる。 おそらく冷めた目で如月を睨んでることだろう。 しかし当の如月も負けじと睨み返していた。その姿に思わず感嘆の声を上げる。 意外に負けん気強いんだな。 …ああけど生徒会の奴らにもこんなだったか。あいつらにあんな態度取れるならこいつなんかわけねえな。 一人納得しているとウザイ場違い男がこっちを見た。 「なんや変な鳴き声聞こえた思たらそこのゴリラか。猿ははよ動物園に帰りいや」 …あ? 「なんつったいま」 「あちゃー日本語理解出来ひんのか。飼育員呼ばなあかんな」 「うるせえよ。場違いなキチガイはとっとと帰れ。それとも病院に戻りたいか?」 「なんや上手いこと言ったつもりかアホらし。だいたい病院てなんやねん」 「キチガイは精神病棟に入院だろ?」 「はっ、失礼なやっちゃな猿のぶんざいで」 「誰が猿だエセ関西弁。その口調気持ちわりいんだよ」 「…そないに痛い目みたいんか」 「誰が?おまえがか?」 問答の最中に立ち上がり睨み合っていた変態と距離が近づく。 如月の声も聞こえない。 こいつはぶっ飛ばす。 「朝比奈!」 …は?
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