とある三人の内心事情

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【eye’s如月琉】 「こいつのこと頼む」 「え?」 「そこの妄想癖よりよっぽど信用出来るからな」 そう顎で示されたそいつは、いまだ名前すら知らない男。 入ってきた時から藤井と険悪な雰囲気を漂わせていた。 まあ原因は…おそらくこっちだろうけど。 藤井は昼には帰ってくると言って出て行った。 最後に眠る朝比奈を哀しそうな、複雑な目を浮かべ見つめながら。 額に置いた手はすっかり熱を帯びていた。 初めに触れた時は熱くて仕方なかったのにいまはほぼ差がないように感じる。 向こうの体温が下がったのか、それともこっちの熱が上がったのか… 出来れば前者なら嬉しいけれど。 「…で?」 静かになった部屋で俺じゃない、低い声が響く。 「転校生くんはなんでここにおるんや?」 うっすら浮かべた笑み。 眼には明らか敵意が見えていた。 「…別に、おまえには関係ないだろ」 言う義理もないし。 だいたい会って早々こんな敵意を向ける奴に愛想振りまく気ないし。 俺は朝比奈に視線を戻し、冷えピタ代わりの手を左から右に置きかえた。 一瞬ピクリと眉を動かしたがすぐもとに戻る。 右の手から伝わる温度はやはり高い。どうやら後者だったようだ。 「さしずめ人間冷えピタ、ってとこか?」 隣で笑う声がするけれど無視した。 「んなことしとる暇あんならさっさと自分の部屋帰ったらどうや」 うっせえな… 帰れるなら帰ってるよ。 「速水怜二なら出てるで」 …は? 何を言ったか脳が理解しきれず、もう一度聞こうと振り返った。 「同室者なら外出とる言うとんねん。おまえ探してな」 「………」 …こいつ、 なんでそんなこと…
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