とある三人の内心事情

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…違う。 なんでそれを知ってる? …あれは、そんなつもりじゃなかった。 こいつはその場に居なかったはずだ。 …ただ、あいつを、俺があいつと居た時を知ってる怜二より、居やすいと思っただけで。 どうしてどこまでこいつは知ってる? …ただ、軽い気持ちで… 『琉、』 頭の中で響いてくるあいつの声が俺を自己嫌悪に陥らせる。 俺は変わってない。 もう無くしたくなかったから、 もう大切なものをそばに置きたくなかったから、 …自分の無力さを味わいたくなかったから、 だからここに来たんだ。 ここに、逃げたんだ。 家を出ようと言った、あいつについて。 …二人を身代わりにして… 二人はどうしてるだろうか? 家で自分の役割を果たしているだろうか? 俺の居なくなった穴を埋めると言ったあいつ。 最後まで俺が出てくのを良しとしなかったあいつ。 …二人は俺を憎んでいるだろうか? 「…そういや、」 何も言わない俺に目の前の男が挑発するように、告げた。 それはあの幸福な、思い出したくもない記憶を呼び起こすものだった。 「"マコト"ってのはあだ名か?」 「っ…」          殺そうと思った。 二度とその呼び名を聞きたくなかった。 あの時、あいつが俺と一緒にいたという証。 『じゃーさ、俺の名前わけようぜ』 『は?』 『"聡真"をわけて、"サトシ"と"マコト"!どうよ?!くっつければ俺の名前になるんだぜすごくね?!うわ俺天才?!』 『馬鹿じゃねえの』 『だってこれなら、一心同体って感じじゃん?』 『…馬鹿じゃねえの』 『ハハハ!照れてるこいつー』 『うっせつつくな!』 『琉、』 『なんだよ』 『おまえは、─────…』 思い出したくない。 人生で一番幸せだった時。 何故こいつが知ってるかなんてどうでもいい。 こいつは殺す。 …そう思ったのに… 「朝比奈…」 朝比奈が俺の手を掴み、目の前の男を足蹴にしていた。
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