とある三人の内心事情

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……… 子供みたいに無邪気に笑う。 いや、子猫か? 喉を鳴らす猫みたいに気持ち良さそうにしている。 もしかして、と考えた予想は当たってたらしい。 …もしかして、甘えてる? いや、始めから結構こんなだったけど。 けど、さっきまで人の心配してたくせに、コロッと自分本意になる。 …まるで聡真だ。 や、比率はあっちのが高いけど。 あの、自分本意になる率は。 …いやそうでもないのか? たしかにマイペースではあったけどあいつはいつも俺達を守っていた。 …俺達が気づかないように、さりげなく。 そうすると朝比奈はわかりやすい。気を使ってるっていうのも、その優しさも全部だだもれだ。 似てるようで、似ていない。 けどやっぱり似てる?いや似てない? 朝比奈森は不思議な奴だ。 ある意味聡真以上かもしれない。 放っておけない気にさせる。 『琉、』 最後の会話が頭を過る。 『俺はおまえを守るって言ったけど、おまえを守りたいって奴は俺以外にもいっぱいいるよ?』 そう言って俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 『だから、怖くなっても大丈夫だ。他の奴らが守ってくれる』 『………』 なんで自分が守ると言わないんだろう? 妙に引っ掛かったけどそれを聞く隙を聡真は与えてくれなかった。 『で、守られてるだけじゃないぞ?』 慈しむような瞳。 暗い中でもその瞳は輝いていた。 『おまえが守りたいって思う奴も、きっとどっかにいる』 なのにどうして、 悲しそうに笑うんだ? 『そいつに会ったら、何が何でも守りきれ』 最後までな。 そう呟いて聡真は出て行った。 『じゃーな琉!』 『…またな』 次にも会うんだからまたなって言えよ!そう俺達に怒ったのは聡真なのに… その時のあいつは、またなって言わず、手を振るだけだった。 「………」 手の中で黒い頭が揺れる。 いつの間にか手が止まってたらしい、もう一度続ければすぐまた大人しくなった。 …今度は守れるかな? 守りたい人ならもう出来ていた。 けど、気づくのが遅かった。 何が何でも守れば良かったと嘆いても、あの人は戻って来なかった。 …今度は、絶対… 『大丈夫』 二つの声が重なる。 ひとつは無くしてしまった声。 もうひとつは… 「守るから、」 今度こそ、 「絶対、巻き込んだりしない」 おまえらが大丈夫と言ってくれるから。
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