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会長の鋭い瞳に射ぬかれ目線を外すことも出来ない。
ただ怒ってるものと違う。
もし怒りだけに捕われているならこんな真剣な顔つきにならないはずだ。
目の奥に微かな悲哀の色を混ぜ会長は口を開いた。
「"サトシ"を知ってるか?」
それはいつか、風紀の長沢敦にも問われたことだった。
"サトシ"なんて知りませんよ。
なんなんすかみんなして俺が誰それと似てるって。
こっちはそんなの意識してねっつの。
などと軽々しく言える雰囲気ではもちろんなく、
会長の一言を聞き副会長や双子の纏う空気もぴしりと固まったのがわかりなおさら何も言えなくなる。
「どうした、知ってるのか?」
しかし会長は口を開かせようとさらに追随をかけてきた。
正直に話そうと息を吸い込む。
「知りません。誰ですか?」
「しらばっくれようとしてるなら無駄なことだ」
「だから知らないんですよ。長沢敦にも聞かれましたけど、"サトシ"って奴はそんなに有名なんですか?」
言った瞬間、あ、と思ったが時すでに遅し。
風紀委員であり、会長達がまとめる『神風』の敵である『天地』の幹部、長沢敦の名前を出した途端全員の空気が変わった。
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