22/44
前へ
/1308ページ
次へ
「なるほど、」 副会長の声が耳の裏から冷たく突き刺さる。 「何があってそんなことを言い出したのかと思えば、そういうことですか」 「『天地』と知り合いなんだー?」 「ますます怪しー」 双子の声が順に耳へ届く。どちらも痛いほどの敵意が込められてるように感じた。 「"サトシ"は俺らとも接触はあったが『天地』の奴らとも通じてた。しかも俺達以上にな。そいつがそう言ったんなら間違いないだろう」 高圧的に断言する会長はこちらを見据えた。 細い目に強い意志を宿して。 「"サトシ"はどこにいる」 ……… "サトシ"とは誰だろう。 ここまで真剣な会長達は見たことない。 追い詰められたような、悲痛な色。 きっと大切な人だったのかもしれない。 居なくなって、似たような奴にまで行方を聞くほどに。 何故"サトシ"は居なくなったんだろう? こんなに想われているのに。 こんなに帰りを焦がれる人達がいるのに。 「…知りません」 「まだ言うか」 怒気を含んだ低い声が全身に浴びせられる。 声量は小さいのに、耳に直接投げられたようにその声ははっきり頭に響いた。 「嘘じゃないです。長沢敦にも言いました。彼もそうだよなと納得してくれてます。本人に聞けば一番早いですよ」 「………」 値踏みするような十六の視線が向けられる。 俺は、正直に言った。 だって本当に知らない。 けど、もし俺の知り合いにサトシという奴が居たなら… 「もし、本当に知り合いでサトシって奴が居たなら、真っ先に教えますよ」 こんなに必死な会長達をそのままにしておけないし。 「大切だったんですよね?」 真正面にいる会長の目が揺れる。 「ただ似てるってだけの俺に、その人のこと聞くくらい」 どうして"サトシ"は居なくなった? 彼らに行く先も告げれないほどの何かがあったのだろうか? "サトシ"、もし近くに居るなら出て来てやってよ。 会長達も、多分、風紀委員の奴らも、みんなおまえを待ってるよ。
/1308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8130人が本棚に入れています
本棚に追加