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「なるほど、」
副会長の声が耳の裏から冷たく突き刺さる。
「何があってそんなことを言い出したのかと思えば、そういうことですか」
「『天地』と知り合いなんだー?」
「ますます怪しー」
双子の声が順に耳へ届く。どちらも痛いほどの敵意が込められてるように感じた。
「"サトシ"は俺らとも接触はあったが『天地』の奴らとも通じてた。しかも俺達以上にな。そいつがそう言ったんなら間違いないだろう」
高圧的に断言する会長はこちらを見据えた。
細い目に強い意志を宿して。
「"サトシ"はどこにいる」
………
"サトシ"とは誰だろう。
ここまで真剣な会長達は見たことない。
追い詰められたような、悲痛な色。
きっと大切な人だったのかもしれない。
居なくなって、似たような奴にまで行方を聞くほどに。
何故"サトシ"は居なくなったんだろう?
こんなに想われているのに。
こんなに帰りを焦がれる人達がいるのに。
「…知りません」
「まだ言うか」
怒気を含んだ低い声が全身に浴びせられる。
声量は小さいのに、耳に直接投げられたようにその声ははっきり頭に響いた。
「嘘じゃないです。長沢敦にも言いました。彼もそうだよなと納得してくれてます。本人に聞けば一番早いですよ」
「………」
値踏みするような十六の視線が向けられる。
俺は、正直に言った。
だって本当に知らない。
けど、もし俺の知り合いにサトシという奴が居たなら…
「もし、本当に知り合いでサトシって奴が居たなら、真っ先に教えますよ」
こんなに必死な会長達をそのままにしておけないし。
「大切だったんですよね?」
真正面にいる会長の目が揺れる。
「ただ似てるってだけの俺に、その人のこと聞くくらい」
どうして"サトシ"は居なくなった?
彼らに行く先も告げれないほどの何かがあったのだろうか?
"サトシ"、もし近くに居るなら出て来てやってよ。
会長達も、多分、風紀委員の奴らも、みんなおまえを待ってるよ。
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