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数瞬の沈黙が部屋に降りる。
ひとつ大きなため息がそれを破り、目の前の影が動いた。
「俺達じゃない」
会長の目が哀しそうに伏せられる。
「あいつを、"サトシ"を一番大事に想ってたのは『天地』の奴らでもない。"マコト"だ」
"マコト"という名前に後ろの三人も反応した。
さっきまで氷のようだった空気が溶けて、けど冷たく降る雨みたいに暖かさを戻さない。
「"マコト"が"サトシ"と会えるなら、それが一番いい」
"マコト"って誰だ?
優しい、けれど哀しい、切ない瞳を机に落としながら呟く名前は、とても愛おしそうに甘く響く。
"マコト"という人物は近くにいるんだろうか?
"マコト"にとって大事な"サトシ"がいなくなったからみんなこんなに必死なんだろうか?
声が伝える、
表情が物語る、
ああそうか、
この人達は"マコト"が好きなんだ。
好きで、けど"サトシ"が居なくなって悲しむ"マコト"を見てられなくて、だから探してるのかな?
「なんだ…」
俺の呟きに意識を飛ばしてたらしい会長が我に返った。
全員の視線がこちらに向く。
「会長達は自分勝手なんだと思ってました。けど違うんですね」
如月が本気で嫌がるのを見抜けないほど鈍いのか、もしくはわかっててでも自分を押し通したのか、その後者かと思ってた。
けど、違うのかな。
こんなに、自分の好きな人の為とはいえ、自分以外のその人にとって大切な人を探すことに尽力出来る。
そんな人達が自分勝手なわけない。
俺結構ひどいこと言ったんだなあ…
「すみませんでした」
頭を下げる俺を会長達はどんな目で見てるだろう?
まあ見えないけど。
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