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自分の残念な頭に辟易する。
どうすればもっと上手く言えるんだろう?
「森くんは人の気持ちに敏感なんですね」
「や、そんなことは…」
むしろ鈍いと思います。
だって、何時だって気づくのは皆が傷ついた後だ。
「気づいてるのだろう?」
理事長は笑顔のまま、けれど微かにその目を悲しげに光らせてこちらを見た。
「………」
とぼけようと思えばいくらだって出来た。
けど、それをしても理事長は気づくだろう。
気づいてなお追及してくる。
だからといって、俺から肯定するなんて出来ない。
顔が情けないことになってるってわかる。
きっと二人以上に歪んでる。
眉にシワ寄せて、唇を噛みしめて。
けど、何を言っていいかわからないんだよ…
「君の考えた通りだ」
黙ってしまった俺に理事長が告げる。
「聡真はもう居ない」
低い、重い声が告げる。
「彼は死んだんだ」
「………」
一番聞きたくなかった答え。
合っててほしくなかった予想。
「…事故ですか?それとも病気?」
自分から出た声はいつになく擦れてる。
聞き取りづらいそれをなんなく受け止め理事長は続けた。
「殺されたんだよ」
…は?
「いや、正確には殺されるよう仕向けられた、といったところか。奴は自らそれを選んだ」
………
それって…
殺されることを、選んだってこと?
「っ、」
嘘だ!
だって雅文さんや、如月がいるのに!
理事長だって!
こんなに想われてるのに!
そんな馬鹿なことするわけない!
そんな、考え無しなことするわけない!
「~っ…」
…そう叫びたかった。
だって、おかしいよ。
殺されるってなに?
なんでそんなことにならなきゃいけないんだ?
自分から選んだって…
残される人達は?
みんなのことは何も考えなかったのかよ?
言いたい。
言いたい。
けど言えない。
言ったって無意味だから。
言って傷つくのは残された人だから。
みんなが一番わかってる。
みんなが一番言いたいんだ。きっと。
どうして?って…
当事者でもない、ましてや何の接点もない俺が言うべきじゃない。
けど…
悔しい。
何も出来ない自分が、
本気で、情けなくなる。
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