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雅文さんの瞳が揺れる。
いまにも泣きそうなほど震えてる気がした。
あ、
泣かないで…
泣かせたいわけじゃないんだ。
ああ、どうして俺は、こう…
「だから言ってるだろう」
理事長を見ると、憤慨したような、呆れてるような目を浮かべ俺を見ていた。
わけがわからずきょとんとする俺に、わからないのか?とため息をつく。
「カフェの手伝いをしろと言っただろう?」
「………」
「君が来たいと言ったんだ。最後まで責任を持ちたまえ」
そう言って見つめてくる。
雅文さんを見れば、さっきと違う、あの穏やかで、優しい顔に戻っていた。
「…もちろんです」
そこが新しい居場所になればいい。
笑顔が溢れる、暖かい場所になればいい。
…そうなるよう、
「俺に出来ることなら、なんだってしますよ」
俺も頑張るよ。
その後はカフェの話がひたすら続いた。
内装云々は理事長が手配するってことになった。本人が自ら進言してたし。
その前に掃除が必要だって話にもなった。全然使ってないんだって。蜘蛛の巣とかひどそうだな…
宣伝は無し。よくあるオープンチラシとか、理事長が見知らぬ輩でたくさんになるのは嫌だと文句を言った為却下に。じゃあなんでカフェやろうって言い出したんだよ。
けど良かった。
二人の表情が明るくなってる。
俺も二人の会話に参加しつつ色々提案していった。
メニューはコーヒーだけにするか、それともお菓子とか簡単な軽食を出すか。
「けれど、さすがに毎日来てもらうわけには。学生なんですから」
「俺は平気ですよ。冷凍したり、保存利くやつ作れば一日二日来なくても出来ますし」
「なんなら長沢くんに作ってもらうかい?雅文さんの頼みとあらばさすがの彼も聞くだろう?」
「そんなことありませんよ。それに彼も忙しいでしょう?」
…ん?
「長沢って、長沢敦ですか?」
「いかにも、我が風紀委員役員、長沢敦だとも」
「雅文さん、長沢のこと知ってるんですか?」
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