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二人には話せない。
藤井もそうだけど、速水には絶対話せない。
二人に聞かせるなんてのは無理だ。
…そういう意味で、二人で話したい、と強調させた。
もちろんそれだけでわかるわけないとは思ってた。
けど、
「いいよ?」
下を向くと如月が微笑をたたえこちらを見上げていた。
「どこ行く?」
如月はわかってくれたんだろうか?
その顔はいつもより穏やかで、優しい表情を浮かべていた。
一瞬雅文さんが浮かび思わず顔を伏せた。
如月の顔が見れない…
「…たく、人騒がせな奴ー」
「怜二…!」
「早く済ませろよ」
そう言って速水は自分の部屋がある方へ歩いて行った。
…やっぱ速水って、こういうとこすごいよな。
俺の気持ちを感じたのか、はたまた雰囲気で察したのか。
「おい、」
まあそれもいまはいいや。
「ごめん藤井、後でいい?」
何か言いたそうな藤井を一瞥し、俺は如月を連れてその場を後にした。
その時見た藤井の表情は、いつもよりシワの増した不機嫌なものだった。
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