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如月を連れやってきたのはいつかの中庭。 如月が泣いてたところ。 …あの涙はなんだったんだろう? 如月はいまも…思ってるんだろうか? 「で、話って?」 ベンチに二人で座りながら喋らない俺に、如月は優しい声音で促した。 いまこの庭には誰も居ない。 校舎の方も、午後は休みだからかひと一人通らない。例え誰か来てもすぐわかるだろう。 「………」 けど、何を話したらいいかわからないんだよ。 そう思っていたら不意に手の中にある固い感触に気づいた。 開けば、少し曲がってしまった写真がおさまっていた。 あの写真、生徒会、速水、雅文さん、そして、如月と…多分、聡真の写る写真。 「え?なに…」 黙って如月にそれを渡した。 何かわかってなかった如月も、折れたそれを見た瞬間、ピシリと凍りついてしまった。 驚愕に目が見開いている。 「…なんで、朝比奈が?」 しばらくして開いていた口を動かした如月は顔が真っ青だった。 「速水のを、まあ他の人伝いにもらったんだ。速水も俺がもらったのは知らないと思う」 「………」 疑うような眼。 それを俺は特に感情もなく眺めていた。 如月は写真が嫌いだと言ってた。 もしかして、この写真も持ってないんじゃないか? それが目の前に現れたんだ。しかも第三者の手によって。 …俺の言い分に納得、ついていけなくても仕方ない。 目を離さずじっと見つめていた俺に険しい表情を見せていた如月は突然力を抜くようにため息をついた。 手紙にもう一度目を向けるその目は怒りとか、憎しみとか、そんなものは一切なく、 ただただ愛しそうに、 切ない光を宿していた。 「…誰かから聞いた?」 一瞬何のことかわからなかったけどすぐそれが聡真のことだと思い頷いた。 「そっか」 如月の目はずっと写真に向いている。 「どこまで聞いた?」 「…聡真が、いなくなって、如月が、それを自分のせいだと思ってるって」 「つうことは堅からだな」 堅? ああ、理事長か。 俺が頷くと如月から呆れたような声であいつしばくと呟くのが聞こえた。 如月は呆れながら、けど微かに笑っているのに、俺はまったく笑うことが出来なかった。 「…なんで、」 「ん?」 「なんで、如月のせいなの?」 俺の問いに如月は黙り込んでしまった。
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