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気付けば立ち上がっていた。
一番傷ついてる如月に、
一番言ってはならない人に、
俺は…
自分の怒りをぶつけたんだ…
「…ごめん」
なにやってんの俺?
「ごめんなさい…」
聡真って奴は考えなしの最低野郎だと思った。
そんなこと思う資格もないくせに。
考えなしの最低野郎は、俺じゃないか…
「初めてだ」
え?
空耳かと思い如月を見る。
滲んだ視界は如月の顔をぼやけさせたけど、さっき聞こえた笑い声はたしかに如月のもので、見えるのも如月の笑顔で、俺は何故如月が笑ってるかわからなくてただ黙って眺めてた。
「俺のせいじゃないって言う奴はいっぱいいたけど、聡真の選んだことを否定する奴は初めてだ」
「…だって、」
大事だったんだろう?
傷ついたんだろう?
泣いて、悲しんで、
手をあんなに冷たくして、涙で目をいっぱいにして縋りつくくらい、
夢の中でも名前を呼ぶくらい、
大切だったんだろう?
「自分が、居なくなったらって考えてたら、如月や雅文さんが泣くってわかってれば、そんなこと出来ないよ」
絶対、出来るはずない。
本当に如月の為を思うなら、最後まで模索するべきだったんだ。
生きてその責任とやらを果たす方法を。
「…そっか」
如月はそう言ったきり黙ってしまった。
再び訪れた沈黙に、俺は自分を責めて責めて責めまくった。
なんでこんな偉そうに言えるんだ?部外者のくせに。如月だって、理事長や雅文さんだって俺にこんなこと言われたってどうしようもないむしろ傷が深くなるだけじゃないか。そもそもなんで俺は如月のとこに来たんだ?何のためにこんな話をしに来たんだ?勝手なのは俺だ。俺の為に如月を傷つけたただ俺がじっとしてられなくて吐き出したいから如月を利用しただけだ一番泣いただろう如月を。
…俺、
ほんと、馬鹿だ。
最低最悪な大馬鹿野郎だ。
「ごめん…」
違うのに。
泣かせたくないのに。
悲しませたくない、傷つけたくない、
ただ、
ただ、笑って…
その綺麗な眼で、
透き通るほど深く心に染み渡る声で、
ただ、ただ笑って、ほしいだけなのに…
「謝んなよ」
如月の低い声が告げる。
そちらに向くと、真剣な表情で、けどクスリと笑いをこぼしてこちらを見てきた。
「なに泣いてんだ」
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