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「ごめん、」
馬鹿か俺は。
なんで泣くんだよ。
俺が泣くべきじゃないのに。
けど、今日に限って、涙を流さずただ笑う如月を見てたら、
何故か涙が溢れるんだよ。
「ありがとう」
なんとかこぼれるのまでは堪えていると如月の微笑が見えた。
………
なんで、如月がそんなこと、
「これ持ってるのが朝比奈で良かった」
あ、
写真を見て言う如月に俺は気づいた。
そうだ、もしかしたらその写真は俺以外の誰か、ナツか、それ以外の奴に渡ってたんだ。
…けど、
「それ、返すよ」
俺が持つものでもない。
それは、速水の、如月達のものだ。
「いいよ」
しかし如月は俺へ写真を差し出してきた。
「朝比奈が持っててよ」
そんな、
「や、けど…」
「この写真、二度と見たくなかった」
その言葉に胸の奥がズキンと痛む。
「けど、朝比奈が持ってるなら、ちょっと違うものに見えるから、いいよ」
…どういう意味だろう。
首をかしげる俺に写真を手渡し、持っててと無理やり握らされた。
「朝比奈が持っててくれたら、俺も嬉しいよ」
………
「…本当に?」
「ああ」
「………」
そう言って、傷が癒えたわけでもないのに、
君が本当に嬉しそうに笑うから、
「…絶対、大事にする」
預かるよ。
如月が、見たいって言えるその日まで。
よろしくなと笑った如月は立ち上がり身体を伸ばした。
「さ、帰るか」
「………」
「朝比奈?」
「如月はどこに帰る?」
俺の言葉にきょとんとした如月、しかしすぐ返事は返ってきた。
「どこって、自分の部屋。朝比奈も帰るだろ?」
………
「うん」
如月は速水のいる部屋に帰る。
…俺は…
「………」
最後に見た怒りのこもったあの眼を思い出しながら、俺は如月と二人寮へと歩いて行った。
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