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………
…あれ?
なんで俺、倒れてんだ?
視界に映るのは部屋の床。
微かに口を包む鉄のにおい。
ああ、これ今日二度目だ。
倒れた際、打ち付けた足や腰が徐々に痛みを訴えてくる。
そこでようやく何があったかわかった。
その瞬間、全部どうでもよくなった。
立ったまま肩を揺らす藤井を見上げる。
口を開けたまま、呆けたような、ショックを受けてるような顔をしてこっちを見てる。
そっか、
「そうやって、」
藤井はいまもわかってくれないんだな。
「殴れば俺が喋ると思ったの?」
「っ!」
俺の一言で一気に我に返った藤井はそのまま顔を背け俺から離れていく。
やがてデカイ足音と共に玄関であるドアの開く音がし、バタンと大きな振動を起こし、閉まった。
「………」
部屋を包んだ空気は静かで、
けど、冷たくも、まして暖かくもない。
…何も感じない。
空気が止まってしまったみたいだ。
俺は立ち上がって、藤井の歩いて行った方と反対のドアに手をかけた。
自分の部屋であるドアノブに手をかけ、回す。
後ろにもう気配は感じなかった。
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