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チワワ達はいまだに彼の悪口を言っている。
内山の親衛隊がその大半だ。
というのもあれだ、登場の仕方が悪かった。
普段生徒との会話や接触を避ける内山が彼の腕を掴んで入ってきたのだ。
あれは明らかに嫌がってたよ転校生。
内山は楽しそうだったけど。結構性格悪いあの人。
まあ僕の先生が!みたいな言葉が飛び交うわけですよ。
しかもパッと見ネクラだし、地味だし、オタクっていうか引きこもりに見えなくもないからなおさら歯止めきかないし。
…けどちょっと言い過ぎじゃないか?
あいつ嫌がってるじゃん。
自分から内山に何かしたわけじゃないじゃん。
てか格好だって、あれ明らか変装じゃん。
「こいつ今日から入る転校生。琉、なんか一言」
転校生の名前だろう。
りゅうと呼び捨てにするのを聞いたチワワ達がまた叫ぶ。
ああもう、イラついてきた…
「…如月琉です」
「………」
びっくりした…
彼の声を聞いた瞬間、あまりの美声に怒りが消え去った。
透き通る声。
小川に流れる風みたいに心地いい。
決して高くない、高校男児の低い音なのに濁りがない。
空、いや、洞窟かな。
深い地下で静かに光を放つ石みたいにその存在をぼんやりと、穏やかに示す。
深みのある声。
ああ、綺麗だ。
初めて神秘的という言葉が似合う人を見た。
「…それだけか」
「一言って言ったの瑞樹だろ」
「そうだな」
笑って奥の席を促す内山。
内山は普通に会話してるけど、なんとも思わないんだろうか?
他の奴らも普通にしてる。
…なんでだろ?
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