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「なんで俺が入らなきゃいけないわけ?」 「そういうなよ速水。おまえ親衛隊の子が撮るヤツノリノリじゃないか」 「俺は入る必要ないだろ」 「なに言ってんだ姉ちゃんおまえのも欲しいって言ってんだぞ」 「…俺も?」 「もちろんだよ如月」 「あ、じゃあ僕撮りますよ」 「いや意味無いよそれ。ハイハイみんな集まって」 「だからなんで俺がー…」 「如月と一緒の写メ欲しくないの」 「俺琉の隣ー!」 「うぜえ」 「藤井先輩それは…」 「ほら笑ってー!」 「…俺、」 「どうしたの如月…」 あ、 如月の顔が歪む。 笑ってるのに、引きつった口。 声が、涙を押し殺すように、潰れてる。 「写真、苦手なんだ」 流してないのに、 一滴も零れてないのに、 まるで幼い子供が泣いているように見えた。 ああ、 「森?」 俺、やっちゃったよ。 「ごめん如月」 「や、謝ることじゃねえし。俺抜かして撮ればいいよ」 「さっき恵くんにも言ったけど、」 傷つけた。 「みんなが居なきゃ意味無いよ」 そんな顔させたいわけじゃなかった。 そんな声出させたいわけじゃなかった。 どうすればいい? 「俺、みんなが笑ってる写真撮りたいんだよ」 どうすれば君は笑ってくれる? 「如月と、みんなが」 そんな悲しそうな顔見たくない。 きっと君は傷を負ってて、その傷の深さを俺は知らないけど、それでもその傷を開かせたのは俺だから。 知らないから傷つけていいか、 知らないから防げなくても仕方ないか、 そんなこと、絶対ないから。 「ごめんな」 「………」 眼鏡の脇からはみ出るほど如月は目を見開いていた。 それが何を意味するかわからない。 けど、涙は引っ込んでる気がする。 ならあとは笑わせればいい。 「如月、」 「…なに?」 よし!ここは俺必殺!変な顔作戦だ!! 見てろ如月、姉ちゃんにも勝った俺の変顔を…! と意気込んだ俺の耳を黄色い悲鳴が貫いた。
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