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一瞬、誰も何も言わない時間が出来た。
けれどそんな沈黙は長く続かない。
「なにおまえ」
会長の親衛隊隊長の子が口を開くと他の隊長も全員喋りだした。
聞こえるのは俺への非難と悪態ばかり。
結構痛いなあ。
俺が悪いってわかってても、やっぱり詰られたらキツいっていう。
「うぜえ…」
如月が俺でも親衛隊でもない、どこかを見つめながら呟いた。
「は?」
「いまおまえなんて…」
「うぜえっつったんだよどいつもこいつも」
「なんだと?!」
「うるせえな。群がってなきゃ何も出来ないお坊ちゃんが、ぴーちく鳴いてんなよ鬱陶しい」
その一言で隊長の面々は完璧キレた。おい!とどこかに呼び掛けると、いつからいたのか廊下の角からガタイのいい奴ら、ゴリラ連中が歩いてくる。
反対からもやってきて挟み撃ち状態。囲まれてしまった。
「もう謝ったって許さないから。そっちの狐目も、オタクを恨むんだね」
なんか狐目とオタクって命名されたっぽい。
いやそれはいい。
問題はこの状況。
はっきり言って殴られたくはない。例え俺が悪くても、いや例えなくても悪いんだけど、リンチは嫌だ。
それにリンチで済めばいいけど…
「安心しなよ。二度と外出れないようにしてあげる」
そう言ってデジカメを取り出す隊長。
最近のデジカメって動画も取れるから便利だよね?!
じゃなくて、
まさかの最悪展開ですか。
俺絶体絶命かも…
身体が震えてるのに気づいたら足まで崩れそうになった。
けどそれを堪えられたのは、
如月が突然笑いだしたから。
渇いた笑いを続ける如月を訝しみながら狼狽える親衛隊たち。
やがて笑いはおさまり、止まる。
「…外に出れなく…ねえ」
呟いたその声はとても、とても小さいのに全員へ届いたらしい。
数人がびくりと肩を震わせた。
「外に出れないって具体的にどんな状態?」
低い…低い声。
「裸撮って流したくらいじゃ出れないなんて言わないですよ?先輩」
笑ってるのに笑っていない声。
「そんなことも知らないガキは…」
泣いてる気がした。
「家帰ってミルクもらって喜んでろよ」
ツライ辛いと子供が叫ぶ。
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