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「間宮先生、」 「なんだよ見ないでくれる?」 「大丈夫だよ!」 「…は?」 「俺絶対言わないから!てか協力するし!」 そう言った俺を見て間宮は呆気にとられたような表情でこちらを凝視した。 大丈夫!こんな可愛いんだし。 飛田さんならきっと性別云々気にしないよ! 「…君って、」 「はい?」 「馬鹿だよね」 「…は?」 いきなりなんだよ。 まあ馬鹿だけど。 「ていうか天然?」 「なんですか馬鹿はともかく天然とまで言われる筋合いないです」 「いや天然だよ」 「………」 おそらく口がまがったんだろう、間宮が俺の顔を見て吹き出した。 こ、この野郎… 「先生、」 「ふふ…なに?」 「…笑っててもいいけど、好きな人いるなら他の奴に手出しちゃ駄目だよ」 「ああそれ?さっきのは冗談だよ」 「俺じゃなくて、如月のこと襲おうとしたんでしょ?」 何気なく言ったつもりだった。 けどそれを聞いた瞬間、間宮の表情が固まった。 あれ、俺またやっちゃった? 「…なんでそれ知ってるの」 「えーと、噂で…」 「あの時誰も居なかったはずだけど」 「如月に聞いて…」 「そんな話してたらとっくに速水怜二あたりが俺の所来そうだけど」 「えーっと…」 答えても返されてどうすればいいか悩んでいると再び間宮が立って俺を見下ろしていた。 「どこまで知ってる?」 「えっと、ただ襲ったとしか…」 「飛田には言った?」 「言ってない言ってない!!」 「信用出来ないね」 間宮の手がまた顎に添えられる。 指がひとつ首筋を撫でぞくりと身体が震えた。 「襲ったとしか聞いてないんだっけ?」 口と口の距離が近づく。 「どこまでやったか、教えてあげようか?」 間宮の目が怖がってる。 怒りもあるけど、それ以上に怖れてる。 俺の口から、大切な人へ話がもれるのを怖れてる。 キスをされるのが嫌だと思うよりどうすればこの人の不安を取りのぞけるのか、それを考えてばかりの俺は抵抗らしいこともせずただ黙ったまま。 間宮は不審に思っただろう。 眉をしかめたが、そのまま顔を近づける。 どうすればいいか、 答えは出なかった。 「先生、」 はっと間宮が顔を上げた。 俺も突然聞こえた声にそちらへ視線を向ける。 「廊下でずいぶん、大胆やなあ」 廊下の角から笑顔を浮かべたナツが現れた。
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