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なんでナツがここに?
そう思ってナツを見てるのにナツは全く俺を見ようとしない。
まっすぐ間宮を見つめ近づいてくる。
「ええんですか先生、こんな人目つくとこでそないなことして…すぐ学校中に知れ渡りますよ。ま、うちの用務員は噂とか気にしないんでどうかわからんけど」
さっきの会話を聞いてたんだろう。
ナツの言葉に間宮の表情が固まる。
それを楽しそうに眺め、ナツはどんどん間宮との距離を縮めていく。間宮は青くなりながら、一歩、ナツから離れた。
「なあセンセ、」
ナツと間宮の距離が一歩分残しなくなった。
目の前に来たのにナツはまだこちらを見ない。
「保健室、いま大変やで?」
「…は?」
思ってもみなかった言葉に間宮の口から気の抜けた声が出た。
ナツは笑顔のまま、もうそこからは動かなかった。
「親衛隊の奴らがケガしたて言って保健室駆け込んだんですわ。けど先生おらんかったからどないしようて、どこ行ったんやろ思て探しとったんです」
「あ、ああそうだったんだ?悪いね」
「いえいえー。ほならさっさと職場戻って仕事してくださいよ」
みんな待ってますんで。
そう言われた間宮は力無く頷きもときた道を戻り始めた。
「先生ー、」
間宮が角を曲がる直前、ナツは呼び止めた。
すると俺の手を掴み思い切り引き寄せる。
咄嗟のことに抵抗も出来ず俺はそのままナツの胸にぶつかった。
…あ、
…心臓、すげえ速い…
「ひとのもんに手出す暇あったら、自分の方なんとかせなあかんとちゃいます?」
しばらくして階段を降りる音が聞こえた。
間宮の顔はナツの胸に収まってたからわからない。
けど、きっと…
「なに考えとるん?」
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