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…怒らせた。 「…っ、」 それ以上に傷つけた。 「…ナ…っ、…ぁ…」 開いた口の中にさらに熱いものが入ってきた。 舌を吸われ裏を絡まれ歯を舐められ、声が息となって外に漏れる。 溢れる唾液は音をたてて飲まれそれでも溢れるものは顎を上げられ流し込まれた。 思わず咳き込むとナツの舌が離れる。 口も離れていく、直後、下唇に焼けるような痛みがはしった。 思わず舌を這わせると鉄の香りが鼻をつく。 「…真っ赤やな」 見えてるはずないのに俺の唇を指でなぞりながら笑みを浮かべる。 「ごめん」 本当なら怒るところなのかもしれない。 あるいはひどいと罵って泣くところかもしれない。 けど、そんな気持ちにはなれなかった。 なれるわけない。 …俺が、傷つけたんだから。 俺を黙って見てたナツはふっと力を抜いて笑った。 「謝るなや」 惨めになるやん。 そう呟いてナツは俺から離れた。 背を向けドアに手をかける。 「今日は無しでええよ」 「え?」 「放課後、来んでええよ。ケーキはあの筋肉マンにでもやったりや」 「ナツ…」 俺が呼び止めるのも無視して、ナツは教室を出た。 ガチャリとドアが閉まる。 暗い部屋にその音がやけに冷たく響いた。
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