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ああそうだ乾燥機かけ行くなら中身出さなきゃ。 けどなー金かかるしなー… どうするか悩みながら制服のポケットを探っていると何か固くて薄い物が指に触れた。 なんだ? 人差し指と中指に挟んで取り出す。 それは昨日ナツにもらった封筒だった。 「やっべ忘れてた!」 湿ってる封筒を慌てて開ける。 中身濡れてませんよーにと恐る恐る取り出したがどうやら無事だったらしい。 「…どっかのバーかな?」 写真には恐らく俺が入学するより前だろう、まだ幼さの残る生徒会のメンバーと他に何人かの男が写っていた。 生徒会メンバーが写真の右端を占領している。 これはスナップ写真だろうか。 誰が撮ったのかみんな自然な表情だった。 副会長が右端から誰かを見て笑ってる。 その隣で会長が怒りを浮かべ双子を押し退けている。 押し退けられてる双子も口を曲げ二人と同じ方を見ていた。 その視線の先に居るのは誰かを抱きしめ満面の笑みを浮かべる速水怜二。 そしてその抱きしめられてる人物は不快感を顕にした顔で怜二の顔を突っぱねている。 小柄な体躯は少年のようだがその表情はもう少し歳がいっているような、怜二と同い年くらいに見える。 白のような、灰色のような、浮世離れしてるのにとても彼に似合っている頭髪。 その髪を撫でながら愛しげに少年を見る、二十代くらいの男。 そこから左にはグラスを片付けるこのバーの主人だろう白髪混じりの穏やかな顔をした男性が写っている。 こんな生徒会と速水怜二は見たことない。 このバーテンの服を着た男性も誰だろう? けど、何より目を引いたのは写真の真ん中に写る二人。 綺麗な髪だと思った。 人なのに人でないような美しさが真ん中に座る少年にはあった。 そしてそのすぐ隣。 茶髪に染め髪をハネさせピアスまでしてるところを見ると不良か、もしくは軟派な男にしか見えない。 けれど少年を見る眼にはその見た目と逆に、とても穏やかで優しい、大切な人を慈しむような光を宿していた。 よく見れば少年も、怜二からは離れようと必死なのに彼の手には何もしていない。 それどころか身体を預けるようにおっかかっている。 それだけで、この二人の関係が見てとれる気がした。
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