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「如月も飲む?」
「あ、いやいい…」
「飯は?」
「え?」
「食ったのか?」
「いやまだ」
「残り物でいいな」
如月の了承も待たず再びキッチンに立つ藤井。
困惑してるらしい如月を座るよう促した。
「藤井、如月の分も作ってくれたんだよ。やっぱオカンは違うよね!…なに藤井包丁なんか使わないでしょ片付けてよ」
「如月その馬鹿押さえてろ」
「は?!」
「えーと、腕捕まえとけばいい?」
「如月まで?!すんません調子のってもうしません!!」
「おまえのもうしないは信用ならねえ」
「ひどい…まあオカンに関してはその通りだけど」
「鱠切り試してみるか」
「やめてえええっ!」
悲痛な叫びを上げたところで横から吹き出す声が聞こえた。
如月がまた笑ってる。
…うん、やっぱ笑ってる方がいいよ。
藤井は気まずそうに俺と目を合わせため息を吐くと奥へと消えた。
「如月って結構笑いやすい?」
「や、ふふ…そんなことねえけど。おまえら仲良いのな」
「親友だからね!」
「へえ」
楽しそうに口元を弛める姿を見ていたら如月の頭から雫が落ちてくるのに気づいた。
「ちょっとまだ濡れてんじゃん」
「え?ああいいよこれくらい」
「良くない。せっかく暖まったのに湯冷めするよ?」
「…おまえって世話焼き?」
「世話焼き父さん?」
「いやどっちかっつうとお母さん」
「オカンは藤井でしょー。ほら鬘外して。下乾かないよ?」
「…は?」
「上濡れたままだと下乾いてても意味無いし」
「…いまなんつった?」
「へ?上濡れたままだと意味無い…」
ん?如月が真顔になってる?
「その前」
「前?鬘外して…」
………
おや?
「…俺鬘だって言ったっけ?」
のおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!
やっちゃったね俺。
さすが馬鹿の申し子。
いやいやまだ誤魔化せる、大丈夫だ。
「言った言った。俺如月からそう聞いた」
「いつ?」
「えーと…てかほら!バレバレだし!」
「…初めて言われたけど」
「藤井!おまえもわかったよな?!」
「…鬘だったのか」
そこはうんでしょおおお?!
「…朝比奈」
駄目だ誤魔化しきれない。
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