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「先日通告した通り、今回の事件現場は中華料理屋・『フラダンス』だ」 この初夏の季節、クーラーのあまり聞かない会議室で、今回の事件の捜査指揮を担当する刑事が今回の事件の概要を説明し始めた。 これでも一応事件の資料やマリモ先輩達の話を聞いて、大体の内容は頭に入っている。 殺害されたのは紡績会社に勤める真崎 潤(まざき じゅん)、32歳。犯人は言うまでもなく、『脱兎』だ。 犯人を『脱兎』と裏付ける証拠や目撃情報などはうなるほどあるのだが、警察はいつも『脱兎』を逮捕できない。それはなぜか。 ――――脱兎の身柄を確保することが、できないのだ。 顔を隠すためなのかどうかはわからないが、いつもウサギの仮面をしていること、いくら追跡調査をしても逃げられることから、しだいにその連続殺人犯は『脱兎』と呼ばれるようになった。 世間を脅かす、『脱兎』……いつになれば、逮捕することができるのだろうか。 そんなことを考えていると、概要を説明していた刑事が一人の刑事とおぼしき男性を横に立たせ、なにやら訝しげな表情を浮かべている。 誰だアイツ……あんなの見たことないぞ? 「……今度から『脱兎』が関連する全事件の捜査責任者となる、“アクータ”だ」
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