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アクータと紹介されたその男は、ところどころウェーブし長い髪、片目についている眼帯、口まで隠れているマフラーといった、顔を覆い隠すかのような風貌だった。 そして長い前髪の中から覗く右目は絶対零度という言葉が良く似合い、この世の全てを見透かしたような、冷たい目をしている。 この男が、脱兎事件の責任者……? 「では……アクータ。軽く自己紹介を……」 「その必要はありません」 刑事の言葉を遮り、アクータは一歩前へ出ると、おもむろに鞄から書類を取り出して説明し始めた。 「これから、貴様ら一介の捜査官に書いてもらわなければならない書類がある。筆記用具を持ってない愚か者は名乗りでろ」 「貴様!?」 「愚か者!?」 アクータのとんでもない発言に、会議室内はざわつき始めた。無理もない。新米刑事と思われるやつが、ベテランも勢ぞろいの捜査官面々に向かってこの言葉遣い。俺でも絶対できないね。 すると、いきなり『ドゴン』という鈍く大きな音が会議室に響き渡り、捜査官達に静寂が訪れた。 音のしたほうを見ると、アクータが壁に裏拳をしたようで、壁に亀裂が入っていた。 「……貴様らに口答えをする資格がないのと同様に、貴様らには俺が発言していない時に勝手に発言する資格はない。良く覚えておくんだな……」 アクータのこの言葉と表情で、捜査官達は押し黙った。すげえ……マリモ先輩達ベテラン捜査官も黙らせたぞ……
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