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「吸血鬼ってのは本当に不幸だな。」
俺はぼやきながら寝ている少女を愛しそうに眺めていた。
不特定多数の誰かさんの為に、客観的に俺を見つめると
黒いスーツのジャケットは若干丈が長く、ボタン全開で着崩している。
内側には真っ赤なシャツと黄色のネクタイ、シャツはやはり着崩し、ネクタイもかなり緩い。
体格はそれほど良くはなく、背は高いが細く撫で肩で、男性特有の硬さを感じさせない、しなやかさがある。
髪の毛は長めで、シャギーカットが流れるように尖りながら多方向に伸びていた。
『飄々』
自分に合う第一印象の比喩には、十分過ぎる単語だ。
「スマート」とも「いい加減」とも取れ、見る者がプラスイメージを持ってもマイナスイメージを持っても使えるから。
「全く、元人間としては燦々とした日光を浴びたいね、日の本生まれだし。」
残念ながら、俺を客観的に見つめてしまうと、少なくとも元日本人とは思えない。
瞳が赤いのと、背中に生えた歪な「翼」が原因だろう。
そしてその特徴は目の前の「人外」と共通の特徴だ。
その「人外少女」の名前はフランドール・スカーレット。
眩しいくらいに綺麗な金髪をサイドテールで束ね、黒い枝から七色の宝石が生えたような歪な「翼」を持っているのが特徴だ。
そして彼女は、ここ幻想郷では一般的だが、しかし逸脱した、逸脱「し過ぎた」能力を持つ。
「んぅ…ふぁあ…あ、獅樹、起きてたの?おはよー。」
「ん、おはよー。」
彼女は昔はこんな感じでは無かったが、今では(身体)年齢相応の子供っぽさやあどけなさ、無防備さを感じる。
「今日の朝ご飯は?」
「まだ、今作るとこ。」
「なら私、トーストがいいなぁ。」
くしゃくしゃの髪の毛を手櫛で整えながらのリクエスト。
とりあえず食パンはあるし、付け合わせの品も作れる。ここは素直にリクエストに従おう。
何故なら俺は『フランによって意味付けされた存在』なのだから。
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