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膝のうえの重力に気づいて目が覚めた。
目を閉じたまま、指をそろり、と伸ばしてみたら、まるい輪郭に触れて、ふふ、って笑いたくなってしまった。
慣れないなぁ、きっと目を開けたら俺はまたなんか変な感じ、って、イニスじゃないみたい、って言って揶揄をこぼしながら、だけどきみの前髪に優しく触れる。
相変わらずに目を閉じたまんまで、指先にぶつかったそこをぽんぽん、と叩いた。
「おきて、おもいよ、いにす」
腿に押しつけられたきみの頬はずいぶんまるみを落としてきた。
残念、あれが可愛かったのに。
恋を喪失するとひとはがらりと変わってしまうんだろうか?
うちがわではなくて、そとがわをこれまでの自分から切り離したがって。
例にもれず髪を切るなんて、そんな女の子みたいなこともして、それで満足だったの?、
って訊いたらなぁに、それ?、って相変わらずに瞳はまるいまんま、きみは逆に問い返した。
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