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寝たふりをしているのはわかってる、だって沈むような重さをこの身体で感じられなかった、ほんのちょっと緊張をしながら甘えてくるのは、つい最近はじまったきみの癖。
「……ねむい」
舌がもつれるような、そういう演技までしてさ、そんなに俺にくっつきたい?
「だぁめ、起きて」
つむじのまわりの短い髪ををやわらかに握りこんだら、イニスはようやく諦めたみたいに、ちいさくため息をついた。
そこではじめて俺は目を開ける。
膝のうえのイニスに視線を落としたら、彼の方が先に俺の顔を見つめていて、ほんとうにきみは俺が好きだね、って言いたくなった。
後追いをする子どものように、近頃のきみは俺のことばかり見つめてるでしょ?、知ってるんだ、俺。
こんなにきみを甘やかして慈しむ人間なんていないもん、そうでしょ?
あの日、きみがこの胸に落ちこんできてから俺はますますきみが可愛いんだ。
やっとやっと俺のもの。
俺だけのイニス。
翻弄するのも傷つけるのも、俺だけに与えられた幸福の権利。
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