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Ⅰ
いにす、いにす。
なんてかわいい名前なの、そうやって戯れて何度も口にするたびにきみは眉をひそめる。
かわいいなんて、変だよ、いい名前、って呼ばれるのとかわいい、って言われるのはちょっと違う気がする。きみの方が―――じょしゅあ、の方がずいぶんかわいい名前じゃない?
唇を尖らせて、ほんのちょっとプライドを傷つけられた、みたいな、きみの拗ねた顔ももの凄く可愛かった。
いや、イニスはイニスだからどこをとってもかわいいんだ、きみの名前が他のどんなものでも俺はきっとかわいいね、って賞賛したんだろうけど、でも、やっぱりその名前の響きが一番にしっくりくる、そうじゃない?
イニス、かわいいイニス。
かわいい、ってきみを褒めてあげたかったから、そうやって言っただけ、って言ったらきっと理解出来ない、って顔をされるんだろうなぁ。
ねぇ?、最近さぁ、俺が笑うと、きみは耳まで真っ赤になるね?
賞賛の言葉は毒になるっていうことをきみは知ってるだろうか?
きみのその不機嫌なふり、も実は照れ隠しだってことは俺はずいぶん前から気づいてるんだよ。
かわいい、かわいいイニス。
俺のでしょう?、って言わなくても、きみはじゅうぶんに理解をしていると思う、きみは
俺のもの。
だってあのとき俺の胸に落ち込んでしまったもの。
そうやってきみは甘やかに、俺に囚われる。
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