酔っ払い

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深夜の地下鉄。乗客はまばら。自分の車両に乗っているのは自分のほかはおばあさんだけだった。  ある駅で酔っ払いが両脇を2人の男に支えられて乗ってきた。酔っ払いは座席に座 らされるとだらしなく連れの男にもたれかかって、電車が揺れるたびに崩れ落ちそう な按配だった。両側の男たちは「しっかりしろ」とか、話掛けていた。  ふと妙な気配を感じて見まわすとおばあさんが自分を尋常ならざる目で見ていた。 なにか切羽詰った事情があるような感じだが、それがなにかさっぱりわからない。  次の駅についた。おばあさんは立ち上がって降りようとするが、自分から目を離さ ない。自分の降りる駅ではなかったが、つられて降りた。 「どうかしたんですか」 とおばあさんに話掛けた。後ろでは地下鉄がホームを滑り出ていく。 「どうかって…あそこにいては危なかったわ。気づかなかったの?」 おばあさんは嘆息した。 「あの真ん中の男の人、死んでたわよ」
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