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小糠雨に煙る表庭をぼんやりと眺めながら、修一は特に意味もなく視線を彷徨わせていた。
窓の外に広がるのは鼠色に曇った空と、黒土の畑ばかり。じつに退屈な風景だ。
「また雨かよ…」
高まる雨音に染まっていく思考が憂鬱で、一つ溜息が洩れる。
――――ああ、どうしてこんなにも憂鬱なのだろう。
日々起こる物事凡てが面倒臭く、煩わしい。
なにも食べる気は起きないし、息をすることをやめれば死んでしまえるだろうか…? と鬱々とした時間を費やす位しか気晴らしが思いつかない。
ただ死について想いを馳せることが、最近専らの日課だった。
◆◆
ありふれた理由かもしれないが、修一は家庭環境の煩わしさに辟易して幼少期の殆んどを祖父母の暮らす田舎で過ごした。
…のだったが家庭環境は現在進行形で悪化する一方で、ついに来るところまで来てしまった両親に残された選択肢は、いまのところ『離婚』ただ一つしか見当たらない。
自分達の事で忙しい両親が子供の事を気にかける訳もなく、かといって気に掛けてもらうほど幼くもないので修一は自分の意思で実家を離れ、祖父母の暮らす田舎に居を移した。
しかし憂鬱さは変わり映えなく付きまとい、それほど気分の改善はみられていなかった。
今のところ、ツライことはない。
金銭面も、身体にも不自由はない。
ただ――――心が憂鬱で窮屈だった。
だけれども、だからといって有効な対策が思いつく訳もなく宛て処のない負の感情ばかりが生まれては蓄積し…身体の内側を空虚が食い荒らしていくばかり。
意気地なしで無気力な少年でしかない修一はその流れに逆らう訳でもなく、ただ受け入れて変わり映えもない憂鬱で鬱屈で、退屈な日々を過ごすのだった。
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