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◆◆
かつて、小百合は双子として生を享けた───はずだった。
生まれついて左目が青底翳(※現在でいう緑内障のこと)だった彼女は、物心着く頃には降りかかる災厄のすべてはお前のせいだと、大人たちから言い尽くせない暴力を受けてきた。
だから双子の妹が流行病に冒されて生死の境を彷徨った時も、隣村から呼んだ祈祷師に唆された大人達は小百合こそが病を呼び込んだ疫病神だと罵倒し、縛り上げた。
祈祷師は、双子の片割れの命を代償に差し出せば妹の命は助かると嘯いて肉親までもを唆し……小百合は祈祷師の言いなりになった村人達によって殴殺された。
17年の、短い人生だった。
未来もなにも、誰も許してなどくれなかった。
私が一体、アンタ達になにをしたというの?
許さない。なにがあっても許すものか。
血も涙もないこの土地の人間、一族に連なる子々孫々まで祟りつぶしてやる…と。
彼女は、暴行を受けながら命尽きる最後の瞬間まで自身を見捨てた凡てを憎悪した。
◆◆
結局のところ、双子の妹の病は単なる肺炎であり医者に診てもらうと直ぐに回復をみせ…。
小百合は、まったくの無実の罪を着せられた末に非業の最期を遂げたのだった。
《許さない…。私が犠牲になった上に生きているというのに、それすら忘れて未だにのうのうと生きながらえているなんて…》
そして幽霊と成り果てた現代もなお小百合はこの世に留まり、双子の妹が生んだ血の連なりを観察しながら静かに怨みを纏い続けていた。
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