その子が転校してきたとき

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その子が転校してきたとき 何か不思議なものを感じた ぼくが自己紹介したときの 瞳の底の深いきれいな海に 何か不思議なものを感じた 遠い遠い既視感の海からの 瓶に入れられた手紙の中に 何か不思議なものを感じた 彼女の一生懸命な姿を見て 背中の上の重石に気づいた 辛いからこそ笑顔なんだと おぼろげながら感じ取った でもぼくは傍観者であった 色々なことを感じながらも 何もしないまま座っていた 新しい世界に解け込もうと 泳ぎまわっていた魚の横で 錆びた船はただ沈んでいた
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