その子が転校してきたとき

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皆で輪になって座るときの 置かれたハンカチの意味に 気づかないはずがなかった 甘酸っぱさを反芻するため そしてわざと負けるために 少ししてから遅れて走った しかし言いかえてしまえば 追いかける勇気がなかった 怖かっただけかもしれない よく分からない大きな力が それに揺さぶられる感情が 恐ろしい怪物に思えたのだ 逃亡者はなぜかそれなのに あの時何もしなかったのに 後日嫉妬というものを知る 嫉妬は氷よりも早く融けた 魚は澄んだ水を手に入れた ぼくにはそれで十分だった
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