ミルク

4/12
前へ
/127ページ
次へ
        ―その南口 今日もたくさんの人々が自分の帰るべき場所、自分の帰宅を誰かが待つ場所へとゆっくりと、何の焦りもなく帰宅している。 きみのことを思い出して僕はこんなにも焦っているのに。 まぁ、いいか。 どうせ僕もいつかはきみのことなんか忘れてしまって…他の誰かと結ばれて。 あの人々の群れに溶け込んでいるのだろう。 そんなことを考えながら、人々の群れを足をひきずるように静かに歩いた。 強がりな僕。 目が潤む。 強がってもきみへの想いには切りがないようだ。 『涙が出るのは乾いた風のせい…。』 僕は風を欲しがった。        
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加