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―その南口
今日もたくさんの人々が自分の帰るべき場所、自分の帰宅を誰かが待つ場所へとゆっくりと、何の焦りもなく帰宅している。
きみのことを思い出して僕はこんなにも焦っているのに。
まぁ、いいか。
どうせ僕もいつかはきみのことなんか忘れてしまって…他の誰かと結ばれて。
あの人々の群れに溶け込んでいるのだろう。
そんなことを考えながら、人々の群れを足をひきずるように静かに歩いた。
強がりな僕。
目が潤む。
強がってもきみへの想いには切りがないようだ。
『涙が出るのは乾いた風のせい…。』
僕は風を欲しがった。
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