紫陽花

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        手をふるきみの薬指には、日焼けの痕。 指に残る日焼けた指輪の痕があった。 そうか。 きみと歩いたこの道を通う僕の姿をきみは知っていたんだ。 僕がきみとの別れに後悔していることも知っていて。 だから僕の姿を見て隠したんだろ、その指輪を。 それは僕の気持ちに対する応えなんかじゃなくて、ただの同情からきたもので。 苦しむ僕を前に、自分の幸せを隠したんだ、きみは。        
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