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………その時、ホッとしたんだ。
好きな人に抱かれなかったことに……ホッとしたんだ。
胸の中が罪悪感で一杯になる。
彼への愛が、そんな事で揺らいだ事が、申し訳なくて、
そんな自分の弱さが許せなくて……苦しかった。
所詮、私は、母の言うように、両親への当て付けの為に、彼と付き合っていたんだと……
あんなに否定したのに……、その通りだったことが辛くて、悔しくて唇をかみしめた。
そんな私の前に、甘いセリフを柄にもなく宣った男、親が決めた婚約者の進藤……さん(下の名前は忘れた)。
弱った心で流されそうになるのを突っぱねると、彼は、とんでも無い提案をした。
『私と結婚したくないのなら、アナタが社長の跡を継ぎなさい。』
真剣な目で、言われたそれに、私の涙はすっかり引っ込んでしまった。
そして、その言葉の真意を探る。
『どうして…?』
『お父様の会社のために私と婚約までしといて、男と逃げたのですから、私のことがそれ程、受け入れがたい存在なのでしょう?
だったら、こちらこそ結婚なんて願い下げです。
お父様の会社のために、自分自身を磨いて、あの会社を操り、お父様を救って差し上げなさい。』
捲くし立てるように、言われて、その事の大きさに、呆然と男を見る。
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