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飛鳥には父がいない。
小学生の時に、何故父が居ないのか母に聞いたら、もっと幼い頃に事故で亡くなったと母に聞かされた。
もっと詳しく聞こうとしたが、母が悲しそうな顔をするのが嫌で、子供心にそれ以上は聞かないほうがいいと感じた。
その疑問は、小学生の間はずっと持ち続けていたが、中学生になると次第に薄れてきて、高校に上がったら今では、もうどうでもいいと思っている。
母を問い詰め、悲しい記憶を呼び起こしてまでして理由を知ったところで父が帰ってくる訳ではない。
死者が生き返る事なんて、天地が引っくり返りでもしない限り有り得ないのだ。
飛鳥が中学生にあがった頃から、母は働きに出始めた。
父の保険金だの、事故の慰謝料だのに加えて、祖父母が資産持ちだった為にお金はあったから働きに出る必要はなかったのだが、
「お金があっても働かなくてはダメになる。」
という信条が母の中にはあったようだ。
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