華の姫

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「…」 沈黙。 「……。」 長い。いや、沈黙が長いわけじゃなくて… 「どこまで続くの、この廊下…」 そう口を付いて出てしまう程、長い。廊下が。 「このお屋敷は広いですからね」 怜も蘭瑛のぼやきに苦笑しながらも返す。 「わたくしも生まれてこの方ずっとこの家に居ますが…、  まだ知らない場所がたくさんなんです」 彼女の年齢は知らないがきっと15年以上はこの家にいるはずだ。 そんな彼女が知らないあるんだから、ここは迷ったら最期、みたいな家なのかもしれない。 幾つ目とも知れない角を曲がった。 「そういえば…」 「何でしょう?」 「…朝餉はいらない…」 歩みを止めて、振り返る。 「なぜですか?」 自然と声が厳しくなった。 「食欲がない。それだけ」 沈黙。 「宴の食事は食べてくださいね…?」 それだけだった。 無理に食わせようというわけでもなく、それだけ。 「新しい部屋に行きましょう。  あそこでは不便だから新しい部屋に通すように、と言われております」 笑いかけてから再び歩き出した彼女に逆らう気もなく、再び歩く。 「蘭瑛様は真力のある方なんですね」 暫く行った所でふとそんな事を言われ、此処からどう逃げようかと考えていた思考から引き戻される。 なぜ?と率直に聞くと 「普通、この辺りぐらいの"力"に晒されていたら  いくらこの家の力を持つ物でも目眩や吐き気ぐらいするものですから」 確かにこの辺りの神力はこの屋敷に入ってから感じる力の中でも最も強く感じた。 「なら、何故怜は大丈夫なの?」 「わたくしは先祖代々からこの家に仕えてきましたし、わたくしも小さい頃からこの辺りの神力に晒されて育ちましたから」 成る程。いわゆる慣れってやつらしい。 「さぁ、着きました。  もう少ししたら他の物がお召し物を用意致しますのでそれまで待って居てくださいね」 昨晩いた部屋と広さは同じくらい。でも置いている家具一つ一つが… 「蘭瑛様が次期頭首と決まってから職人が手をかけて作った物ばかりなんですよ」 私が次期頭首と言うと…、ずっと断っていたから約3ヶ月は掛かってるのか。
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