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「帰ろうか。翼くん」
「……ああ」
鏡の向こうから、七夜の声がし、ソレに呼び掛けた。
ソレは、短く返事をし、翼自身に嘲る様な笑みを一瞬だけ見せた後、鏡から姿を消した。
七夜とそれに簡単な受け答えを返すソレの声が遠ざかるのを感じ、翼は、泣き叫びたくなる気持ちで一杯だった。
「待ってくれぇ!七夜、ソイツはオレじゃねぇ、頼む、助けてくれぇ!!」
翼は、必死に呼び掛けたが、無情にも、七夜は見向きすらせずに、ソレを連れてトイレから出ていったのだった。
左右逆となった世界に、翼を残していったまま…。
必死に叫び続ける翼の声は、誰の耳にも届く事はなかったのだ。
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