第一話 「鏡」

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「なあ、翼」 「うん」 昼間の休み時間、仲が良い友人が声を掛けた。 「お前……左ききだったっけ?」 課題をやる翼の利き手を眺めながら、友人が不思議そうに尋ねた。 「なんか黒子の位置も違うような…」 「気のせいだろ?気にしてたら禿げるぞ」 翼は、課題から目を反らし、友人に目線をやると、イタズラっぽく笑う。 からかわれた友人は、マジかよ、とオーバーに叫びながら笑い出した。 その後、その話題を気にする事も無く、次は、好きなアイドルの話を翼に聞かせたのだった。 「些細な疑問に気づいても、深くは追求しないんだよね」 廊下側の窓から、翼らのやり取りを眺めながら、黒髪に学ランの少年が呟く。
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