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「鏡に映る自分は、左右逆だからね。ほら、鏡を見てごらんよ」
七夜が指を指した方に鏡がある……翼は、言われた通り、その鏡の前に立った。
鏡には、いつもの翼が映る……ただ、パーカーに印刷されているロゴや、目元のほくろの位置が逆に映っているのを見て、翼は納得した表情を浮かべた。
「おお!盲点だったぜ、お前、頭いいな!」
「分かった?……あと、話に夢中になってて、翼くんは気づいてないみたいだけど……もう目的は達成されてるよ」
隣にいた七夜が、口角を上げ笑いながら言った。
翼は、周囲に目をやると、其処は、件の噂がある男子トイレの鏡の前だ。
「なあ、今、何時?」
身体が震え、背中に汗が一筋流れるのを感じ、翼は、恐る恐る尋ねる。
「零時ジャストだよ」
「……!?」
無邪気とも言える声で、七夜が時間を告げると、翼は目を強く閉じた。信じていたわけではないが、やはり恐怖を感じる……しかし、何の異変も感じず、数秒が経過した。
翼は、恐る恐る目を開くと、いつもの自分がいた。
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